第5窓の送付物、解読班が始動 ヒンド数理班・ヘラス古文献研究者・漂着一世が参加
TDA次元調査課は24日、既報(20日)の第5窓「剣の国」で回収された送付物——絵と文字のある紙——について、第三鑑定センターを中心とした解読班を正式に発足させたと発表した。ヒンド連邦の数理解析班、ヘラスの古文献研究者、そして漂着一世の岸浦汐(74)が加わる異色の編成で、現時点では記号の並びに一定の規則性がうかがえるという一次所見のみが示された。文字の意味、絵が何を描いているかはいずれも未解明のまま、次元調査課は「急いで答えを出す場ではない」と改めて強調している。
■ 筒の中の紙、ようやく「班」がついた
TDA次元調査課は24日、既報(20日)の第5窓「剣の国」で回収された筒状の送付物——折りたたまれた一枚の紙——について、第三鑑定センターを拠点とする解読班を正式に発足させたと発表した。回収から4日、紙は既報どおり繊維分析の段階にとどまっていたが、次元調査課は「素材の分析と、記されたものの分析は別の作業であり、同時に進められる」として、記号と絵そのものの検討に着手したことを明らかにした。
班の構成は三者。暫定148系統の金属柱の記号解読を担当してきたヒンド連邦数理解析班(主任・アニルダ・ラーオ氏、既報)が、統計的な手法を第5窓の紙にも応用する形で参加。古代の「揺らぎ伝承」文献を研究するヘラスの歴史学者ニコス・ザフィラス氏(58)が、第7次国際共同研究の枠組みで初めて来亰し加わった。さらに、音楽教師で漂着一世の岸浦汐(74、既報)が、紙に描かれた絵について意見を求められる立場として名を連ねている。次元調査課の担当者は「数理・文献・当事者という、これまでの解読作業にはなかった三つの視点を同時に置いた。どれか一つに答えを決めさせるつもりはない」と説明した。
■ 「規則性はある。意味は、まだ無い」
24日の会見でラーオ氏は、紙に記された記号——既報どおり文字のような印とみられるもの——について、1週間弱の初期分析の結果を示した。「記号は単独では現れず、2個から4個のまとまりで区切られて並んでいる。まとまりの長さや、どの記号がどのまとまりの先頭に来やすいかには、偶然とは考えにくい規則が見える」とラーオ氏は述べた。暫定148系統で確認した「桁上がり規則」とは異なる種類の規則だとしつつ、「数を表す記法ではなく、音か、音節のようなものを書き分けている可能性がある」との見立てを示した。ただし「可能性」という言葉を何度も繰り返し、「規則があることと、それが何を意味するかは、まったく別の階段だ」と強調した。
次元調査課の担当者も「ラーオ氏の所見は、紙の記号が無秩序な模様ではないという点では心強い。だが、これは解読の入り口に立ったという意味でしかない」と慎重な言い回しを崩さなかった。既報(9月26日)の第1窓「灯しの街」の「式」の札との書体の類似についても、今回の分析では直接比較していないとし、「比較できる段階にはまだ無い」との立場は変わっていない。
■ ヘラスの学者「文献にある図と、構図だけは似ている」
ヘラスから来亰したザフィラス氏は、紙に描かれた簡単な線画——海岸線らしきものと、そこに立つ背の高い岩か塔のような輪郭——について、「ヘラスに残る古い『揺らぎ伝承』の挿絵にも、海と岩を組み合わせた図がいくつかある。構図の取り方だけは似ている気がする」と語った。ただし即座に「似ているというのは印象の話であり、学術的な根拠ではない。ヘラスの伝承自体、どこまでが本物の記録でどこからが後世の付け足しか、我々の中でも定まっていない」と自ら留保を付け加えた。次元調査課も「構図の類似という指摘は記録するが、これをもって何かを結びつける判断はしない」と述べ、第31系統「隣の世界」のように地理的・文化的な近さをうかがわせる既報があることにも触れつつ、安易な接続を避ける姿勢を重ねて示した。
■ 岸浦汐「絵を見て、何かを思い出したわけではない」
岸浦汐は、紙の絵を初めて見せられた日について「正直に言えば、何かをはっきり思い出したわけではない」と率直に語った。既報どおり、岸浦は第5窓の録音の節回しが「岸の子守唄」に似ていると10月第1週に発言し、今月21日には来亰中の瑠海国王カイエ3世が自宅を訪ね、子守唄を聞いていったことも既報となっている。「子守唄のときは、音を聞いて、懐かしいという感覚が先に来た。でも今回の絵は、懐かしいとも、知らないとも、どちらとも言えない。見たことがあるようで、無いようで、困ってしまった」と岸浦は言う。
それでも次元調査課が岸浦を班に加えたのは、「漂着一世の記憶や感覚は、数理や文献では測れない種類の手がかりになり得る」という判断からだという。岸浦自身は「自分の役目は、分かったふりをしないことだと思っている。分からないものを分からないと言うために呼ばれたのなら、それはできる」と話した。この発言に、立ち会った柚木透技官(31、既報)は小さくうなずいたという。
■ 柚木技官「三人が顔を合わせた、その日自体が記録」
既報どおり第5窓の札の動きを追い続けてきた柚木透技官は、24日の班の初顔合わせについて「数理の人と、文献の人と、当事者の人が、同じ紙を同時に見つめている場に立ち会えたこと自体が、この面を担当してきて初めての経験だった」と心境を語った。「誰かが正解を言い当てる場ではないと分かっていても、三つの視線が重なる瞬間には、何か近づいた気がしてしまう。その感覚を、記事では慎重に書かないといけないと自分に言い聞かせている」とも付け加えた。
■ 「漂着民の故郷かもしれない」論争、再燃の兆し
既報どおり、第5窓の録音と岸浦の子守唄の類似をきっかけに、「剣の国は漂着民の故郷かもしれない」という市民の間の論争がくすぶっている。24日の会見後、SNS上では解読班の発足を受けて同様の議論が再び活発になったが、次元調査課は「学術的な結論が出ていない段階で、故郷かどうかを論じるのは時期尚早だ。班の目的は紙の記号と絵の分析であり、系統の由来を証明する作業ではない」と改めて釘を刺した。11月上旬に初会合を予定する外部有識者検討会(座長・梶浦悦子氏、既報)には、今回の解読班の進捗が議題の一つとして正式に加わる見通し。
■ 第三鑑定センター「本鑑定とは別の歩み」
第三鑑定センター主任鑑定官・蓑輪誠一氏(48、既報)は、紙そのものの繊維分析(進行中)と、記号・絵の解読作業(今回発足)が並行して進むことについて、「紙が何であるかを調べる仕事と、紙に何が書かれているかを調べる仕事は、速度も性質も違う。両方が噛み合うまでには、まだ時間がかかると考えてほしい」と述べた。解読班の次回の打ち合わせは来月初旬を予定しており、年内に結論が出る作業ではないとの見通しに変わりはない。
■ 「向こうに、伝えたいことがある」という前提の重さ
次元調査課は24日の会見の最後に、「この紙が本当に意味を持つ記号なのか、単に装飾なのかさえ、まだ証明されていない」と述べた一方、「それでも、向こうの誰かが、こちらに何かを伝えたいと思って筒を投げたという前提そのものが、これまでの五つの窓の観測史には無かった重みを持っている」と総括した。解読班の三つの視線が同じ紙の上で重なった24日という日が、来月以降どのような一歩につながるのかは、誰にも分からない。











