第2窓「機構の海」、鳴き交わしが二度目の「八」 新しい数え方、定着の色
湾岸倉庫街・第4号倉庫の第2定常窓「機構の海」で、26日深夜に初めて崩れた「鳴き交わし」の数え方が、28日深夜からの開口でも再び1から8まで数えるパターンを示したことが29日、分かった。既報の1から7で折り返す規則が5回続いたのち、26日に一度だけ8まで進んだ時点では「一度きりの乱れ」とも説明できたが、2回続けて8を記録したことで、次元調査課は「新しい数え方に移った可能性」を初めて口にした。意思疎通との断定は今回も避けている。
■ 28日深夜、中1日を置いての開口
第2窓「機構の海」は、26日深夜から27日未明にかけての開口(64分間)を最後に、27日は開口がなかった。次に開いたのは28日午後11時5分からで、41分間続き、29日午前0時前に収束した。次元調査課によると、塔どうしの連打の数を1、2、3と増やしていく「鳴き交わし」は今回も序盤から確認され、窓番は記録ノートに正の字を書き足していった。そして今回も、7の次で折り返さず、8まで進んでから1に戻った。
■ 「一度きりの乱れ」ではなくなった
既報(27日)では、9月30日から5回連続で続いた「1から7で折り返す」規則が、26日深夜の開口で初めて崩れ、8まで数えるパターンを示したことを報じた。次元調査課はその時点では「規則が崩れたという事実は記録するが、1回だけでは、一時的な乱れなのか、恒常的な変化なのかを判断する材料にならない」としていた。今回、2回続けて8を記録したことで、担当者は29日の取材に「6回目で崩れ、7回目でも同じ崩れ方をしたとなると、単発の乱れという説明は苦しくなってくる。言葉を選ぶが、『新しい数え方に移った』可能性を、初めて検討の対象に上げている」と述べた。
■ 「定着」と呼ぶにはまだ早い
もっとも、次元調査課は慎重な言い回しを崩していない。担当者は「2回というのは、5回続いた旧パターンの実績に比べればまだ少ない。次に開いたときにまた7に戻る可能性も、完全には排除できない」と話す。既報どおり、意思疎通の証拠と結びつける見解は今回も示さなかった。「数える意図があるのか、こちらが数として読み取っているだけの別の現象なのか——今回の記録が増えたことで、どちらの可能性も以前より具体的に議論できるようになった、という段階だ」という。五原則(本紙既報)に沿い、原理の解明や意味づけを急がない姿勢は維持されている。
■ 数字好きの記者の見方
本紙科学面兼務の甲斐谷連記者は、過去の鳴き交わしの開口時間を並べたメモを独自に作成している。既報分を合わせると、1から7で折り返した5回の開口時間は34分から71分の幅で、平均は52分。これに対し8まで数えた2回は41分・64分で、平均は53分とほぼ変わらない。甲斐谷は「開口時間と数え方に単純な相関はなさそうだ。むしろ、こちらが数字の意味を探そうとする態度自体を、一度疑ってみるべき段階かもしれない」と話す。次元調査課はこうした独自の集計を否定も肯定もしていないが、「外部からの検証の目は、観測の信頼性を保つ上でむしろ歓迎したい」としている。
■ 窓番の夜、二度目の緊張
28日深夜に観測室に詰めていた窓番は、匿名を条件に取材に応じた。「26日のときは、どこか『珍しいことが起きた』という興奮が先に来た。今回は違う。7の次に8画目を書く手が、また止まった瞬間、今度は『これは続くんだな』という静かな納得のほうが大きかった」と話す。塔の群体そのものの外観や、開口の長さ・明るさに、既報と比べて目立った違いは見られなかったという。「向こうが変わったのか、こちらの受け取り方がようやく追いついてきたのか。どちらだとしても、次に開いたときにまた数えるしかないのは同じだ」。
■ 外部有識者検討会とロボ法制審への扱い
既報どおり、この観測記録は10月23日にロボット法制審議会の非公開会合へ資料として提出された実績がある。次元調査課は、2回目の8の記録についても11月上旬に予定する外部有識者検討会(座長・梶浦悦子氏、既報)に報告する方針を示したが、正式な議題への追加はなお見送るという。「1回の乱れから2回の乱れになったことは重い材料だが、まだ『規則が変わった』と結論づける段階ではない。議題にするのは、3回目以降の記録がそろってからにしたい」と担当者は説明した。
■ 観測ノートに残る「8」の筆跡
次元調査課が公開した観測ノートの写し(抜粋)には、26日分と28日分、二晩分の正の字が並ぶ。いずれも7画目まではほぼ同じ速さの筆致だが、8画目だけがわずかに大きく、筆圧も強い。窓番の一人は「本人も意識していないと思うが、2晩とも同じところで手の力が入っている。ノートを見比べて初めて気づいた」と話す。次元調査課はこの筆跡の違いを科学的な資料としては扱わないとしつつ、「記録者の受け取り方の変化そのものも、観測の歴史の一部として残す価値はある」とコメントした。
■ 他の定常窓への波及はなし
既報どおり、第1窓「灯しの街」は振替見学を継続中、第3窓「粘体の沼」は週1回の信号実験、第4窓「巨獣の原野」は仔の接近を受けた観測員増員、第5窓「剣の国」は解読班の分析継続と、いずれも第2窓とは別の局面にある。次元調査課は「5つの窓はそれぞれ別の系統で、一つの窓の変化が他の窓に連動する根拠は今のところない」と改めて整理した。ただし、担当者は「複数の窓で同時期に『これまでと違うこと』が重なっているのは事実で、全体を一つの地図として見る視点も失わないようにしたい」とも述べ、個々の窓の動きを横並びで記録する作業を続けているという。
■ 読者からの反応
本紙の読者投稿デスクには、既報(27日)掲載以降、鳴き交わしに関する問い合わせが例年に比べて増えているという。多くは「次はどんな数になるのか」という単純な関心だが、「8進法で考えているのでは」「塔の数と連動しているのでは」といった独自の仮説を寄せる読者も少なくない。次元調査課は「読者の仮説一つ一つに回答する立場ではないが、こうした関心の広がり自体は、観測を続ける励みになる」としている。
■ 今後
次元調査課は、次回以降の開口でも引き続き鳴き交わしの記録を続け、8のまま続くか、7に戻るか、あるいはさらに別の数へ変化するかを注視する。担当者は「記録を急いで意味づけるより、まず数を積むことが先だ」と繰り返した。既報どおり、群体の意図・正体とも未解明のまま温存される。



