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「故郷の世界線へ、順番が来れば」 漂着一世ねらう名簿商法、警察が摘発

2026年(透暦52年)10月29日 (社会部・汐入梨花) English

警察は28日、漂着一世の高齢者に対し「観測協力名簿に登録すれば、故郷の世界線へ戻る優先順位が得られる」と持ちかけて登録料を集めていたとして、城東地区在住の男2人を詐欺容疑で書類送検したと発表した。既報のとおり揺らぎは一方通行であり、漂着した者が元の世界線へ戻る手段は制度上も物理上も存在しない。被害は深川・亀戸の一世十数人、総額は約2,100万円に上るとみられる。

■ 「名簿に載れば、順番が来る」

警察生活安全課によると、城東地区の賃貸事務所を拠点にしていた男2人(43・51、いずれも氏名非公表)は、2025年末ごろから「漂着者観測協力名簿」と称する独自の名簿を作成し、漂着一世の高齢者に「名簿に登録し、月々の『観測協力費』を納めれば、将来、故郷の世界線へ戻れる順番が優先的に回ってくる」と説明して登録料・会費を集めていた疑いがある。登録料は一人当たり数十万円から最大で約300万円に上るケースもあり、被害は深川・亀戸の一世十数人、総額は約2,100万円に上るとみられる。警察は28日、2人を詐欺容疑で書類送検した。起訴判断は検察に委ねられる。

■ 「一方通行」を逆手に取った手口

既報のとおり、揺らぎは情報・漂着物・漂着民が一方的に流れ着く現象であり、こちらから何かを送ることも、漂着した者が元の世界線へ戻ることも、制度上も物理上もできない。TDA広報担当者は28日の取材に「送り返すことが可能だという事実は一切ない。これは今回に限らず、これまでも、これからも変わらない」と改めて強調した。捜査関係者によると、2人は「TDAの内部名簿と連携している」とも説明していたが、そのような連携は確認されておらず、TDAは「当局の名簿や制度と一切関係がない」としている。

■ 被害者「半分は分かっていた。でも、順番という言葉が良かった」

被害者の一人で深川在住の漂着一世の女性(82、匿名)は本紙の取材に「半分は、うまい話だと分かっていた。それでも『順番が来れば』という言い方が良かった。可能性がゼロだと言われるより、順番を待つ方がましだと思ってしまった」と振り返った。女性は約80万円を支払っていたという。「お金のことより、その気持ちにつけ込まれたことの方が、正直こたえる」。

■ 「岸渡り」の立会人も懸念

岸渡りの立会人を四十年近く務める潮田一(73、漂着一世、既報)は「一世の中には、帰れないと分かっていながら、分かっていないふりをして生きている人も多い。そのふりを壊すような話を持ちかけるのは、一番やってはいけないことだ」と話す。「立会人の仕事をしていると、同じ年頃の知り合いが何人もいる。もし声をかけられていたら、自分も半分は信じてしまったかもしれない」。

■ 消費者庁研究会も論点に

指数連動価格などを検討する消費者庁の有識者研究会(座長・深沢律子、既報)の事務局は「対象も手口も従来の論点とは異なるが、高齢の漂着系市民を狙った消費者被害という点では地続きの問題だ。今回の事案も研究会の視野に加える方向で検討する」とコメントした。警察は、同種の名簿商法が他地区にも及んでいないか、引き続き確認を進めるとしている。

■ 名簿に実在する名前は使われていた

捜査関係者によると、名簿に記載されていた「受付番号」は実際に発行されており、被害者が確認した際には律儀に番号が繰り上がっているように見せる仕組みもあったという。露木要・予備調査協会会長(56、既報)は漂着物鑑定とは別件ながら「鑑定の世界でも『待つことへの説明』が商売の種になりがちなのは分かる。順番が見える形で示されると、人は信じたくなる。今回の件は、鑑定の待合室を名乗るうちの業界にとっても他人事ではない」と話した。

■ 今後

書類送検を受け、検察が起訴するかどうかの判断を進める。警察は「名簿や『優先順位』を名目にした勧誘があれば、実際に支払う前に相談してほしい」と呼びかけている。一方通行という制度の根本が変わらない以上、この種の商法が形を変えて再び現れる可能性は否定できず、警察・TDAともに注意喚起を続ける方針だ。

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