第4窓「巨獣の原野」、仔が窓に近づく姿を初めて観測
城北・王子の丘にある第4定常窓「巨獣の原野」で27日夜、これまで目立った動きのなかった観測に変化があった。体高を大人の個体の十分の一ほどに抑えた巨獣の仔とみられる一頭が、集落の人影に付き添われるように窓へ近づき、手前数十メートルで足を止める様子が初めて観測されたことが28日、TDA次元調査課への取材で分かった。次元調査課は「越えてくる兆候ではない」と慎重な見方を示しつつ、継続観測の体制を強化する方針を明らかにした。
■ 27日午後10時すぎ、約40分間の開口
第4定常窓「巨獣の原野」(第63系統)は27日午後10時7分から開口し、47分間続いた。次元調査課によると、これまでの観測では、体高数十メートルの巨獣が草原を歩き、集落の人影がその歩みに合わせて暮らす様子が主に記録されてきた。27日の開口では、これとは別に、体高を大人の個体の十分の一程度に抑えた一頭――巨獣の仔とみられる個体――が、集落の人影数人に付き添われるように窓の方向へゆっくりと近づく姿が初めて確認された。
仔とみられる個体は、窓の手前おおむね30〜40メートルの地点で足を止め、しばらくその場にとどまってから、付き添いの人影とともに引き返した。観測中、窓室の湯呑みが揺れるほどではなかったが、机上のメモ用紙がわずかに震えたという。窓番は「これまでは大人の個体の歩みで窓全体が震えることがあったが、今回は仔の分だけ、震えも控えめだった」と振り返る。
■ 「越えてくる兆候ではない」
次元調査課は取材に対し「仔が窓に近づいたのは観測史上初めてだが、これをもって越えてくる兆候と判断するのは早計だ」との見解を示した。基本ルール(一方通行・制御不能)に変更はなく、こちらから働きかけることもできない。担当者は「巨獣の原野では、仔が集落の人影に導かれて普段と違う場所まで歩くこと自体は、これまでも起きていたかもしれない。窓という、たまたま人間が観測している地点にそれが来たというだけかもしれない」と述べ、意味づけを急がない姿勢を強調した。
TDA局長・火浦誠は定例会見で「観測網は正常に機能しています」としたうえで、「近づいたことは記録するが、近づいた理由は分かっていないと言うほうが正直だ」と述べた。
■ 観測体制の強化
次元調査課は、第4窓の観測員を通常の1人から2人に増やし、仔の接近が繰り返されるかどうかを重点的に記録する方針を明らかにした。既報(12-紙面テコ入れ方針で予告された枠組みに基づく観測強化の一環)のとおり、巨獣の原野では今後、仔の行動を軸にした観測強化期間を設ける見通しだという。次元調査課は「窓が震えるほどの接近が起きた場合にどう備えるかは、湾岸の排除措置の経験も参考にしながら検討する」としたが、具体的な対応方針はまだ固まっていない。
■ 窓番の記録
当夜の観測に立ち会った窓番は「大人の個体の足音には慣れていたが、仔の歩みは軽くて、最初は何かの見間違いかと思った」と話す。「集落の人たちが仔を急かさず、立ち止まるのを待っていたように見えたのが印象に残った。向こうにも、子どもを急かさない暮らしがあるんだなと」。
■ 他の窓との比較
次元調査課は、今回の観測を他の定常窓の既報と並べて検討する姿勢も示している。既報(10月23日)の第2窓「機構の海」の鳴き交わしが5回の一致の直後に崩れた例、既報(16日)の第3窓「粘体の沼」の信号実験への応答など、いずれも「向こうが変化を示した直後に、こちらの受け取り方が追いつかない」という構図が繰り返されている点を担当者は指摘する。「窓ごとに現象は違うが、こちらの戸惑いの形だけは似ている。それ自体が記録に値する」という。
外部有識者検討会の座長を務める梶浦悦子氏(58、湾洋大学教授、既報)は取材に対し、「見ていていいのかという倫理論争は、見る対象が大人から子どもに広がったことで、また別の重みを持つかもしれない」と述べ、11月の検討会で倫理面の論点としても取り上げる可能性を示唆した。
■ 排除措置の経験との違い
既報の枝川の特定漂着種をめぐる排除措置(9月2日)では、こちら側に現れた生物への対応が制度化されている。しかし第4窓の場合、巨獣はあくまで窓の向こう側にとどまっており、現時点でこちら側への影響は確認されていない。TDA生物管理課の担当者は「排除措置の対象になるような事態とはまったく違う。向こうで起きていることを見ているだけで、こちら側で何かが起きたわけではない」と整理したうえで、「ただ、万が一に備えて知見を共有しておくのは意味がある」と述べた。
■ 今後
次元調査課は、仔の接近が一度きりの出来事か、繰り返される行動の一部かを見極めるため、今後の開口でも同じ地点への接近がないか注視する。正体・意図とも断定せず、未解明のまま温存する方針に変わりはない。11月上旬に予定する外部有識者検討会(座長・梶浦悦子氏、既報)にも今回の観測を報告する見通し。


