窓番日誌:三人で同じ紙を見た夜
連載「窓番日誌」第5回。第5窓の送付物をめぐる解読班の初顔合わせ(既報)に、窓番として立ち会った一夜の記録。
いつもは窓室に湯呑みを二つ並べる。自分の分と、交代の相手の分。今夜は三つ並べることになった。ヒンドから来た数理の人、ヘラスから来た文献の人、それから岸浦さんという音楽教師の方。三人とも、窓そのものより紙の方をよほど熱心に見ていた。
数理の人は、記号の並び方について「2個から4個のまとまりで区切られている」と言っていた。聞いていて、自分が毎晩数えている灯りの柱の並び——三本に一本だけ高さが違う、あの列——と、どこか似た話だと思った。規則があるということと、それが何かを意味するということは別の話だ、と数理の人は何度も言っていたが、それはこの仕事をしている自分にも馴染みのある言葉だった。
ヘラスの人は、絵の中の岩のような形について「似ている気がする」と言ったあと、すぐに「印象の話だ」と自分で打ち消していた。岸浦さんは、もっと静かだった。絵を見て、何かを思い出したわけではないと、はっきり言っていた。分からないものを分からないと言うために呼ばれたのなら、それはできる——その言葉が、今夜はいちばん耳に残った。
三人が帰ったあと、窓室には自分だけが残った。灯しの街ではなく、こちらの、ただの石造りの街並みをもう一度見た。三つの湯呑みを片づけながら、もし向こうにも窓番のような仕事をしている人がいて、今夜のこちら側を見ていたとしたら、何を思うだろうかと考えた。分からないことは、今夜も分からないままだった。それでも、湯呑みを片づける手は、いつもどおり動いた。

